長年叫ばれていた配偶者控除の廃止が現実味を帯びつつあります。
17年度の税制改正大綱に盛り込まれる予定の、配偶者控除の廃止について
少し考えてみましょう。
現行の配偶者控除制度
まず、現行の配偶者控除制度を簡単におさらいしてみましょう。
同一生計の配偶者で、合計所得金額が38万円以下の者(これを控除対象配偶者といいます)を有する場合には、その者の所得金額から38万円が所得控除として控除されます。
なお、その控除対象配偶者が70歳以上の者(これを老人控除対象配偶者といいます)である場合には、その者の所得金額から48万円が所得控除として控除されます。
合計所得金額38万円以下とは、給与をもらっている人の場合には年収103万円以下の人をいいます。これは「給与収入:103万円」から「給与所得控除額:最低額65万円」を引いた金額で判定することによります。
年収600万(所得税率10%)の旦那さんがメインで稼いで、配偶者である奥さんがパートで103万円以下で稼いでいる場合、配偶者控除の適用による旦那さんの税金の軽減額は次のとおりです。
・所得税 38万×10%=38,000円
・住民税 33万×10%=33,000円
(※住民税の配偶者控除は33万円となります。)
所得税、住民税合わせて年間71,000円程の税金が軽減されていることになります。
なお、上記の例は所得税の税率10%の場合ですが、所得税率は5%~45%と所得金額に比例して上がっていきます。所得が多ければ多いほど、軽減額が大きくなる仕組みです。
配偶者控除が廃止された場合の税負担の増加額
上記の軽減を受けるために、奥さんがパートで103万の収入を超えないように勤務時間を制限しているというのが、巷でよくある話です。
このことが「女性の社会進出を妨げる壁になっている」という指摘や、「専業主婦世帯とパート主婦世帯の不公平感」、「高所得者程軽減額が大きくなる仕組みが不公平だ」という指摘から、配偶者控除の廃止が叫ばれているわけです。
では、この配偶者控除が廃止された場合の税負担の増加額を見てみましょう。
・所得税率 5%の場合 38万円×5%+33万円×10%=52,000円
・所得税率10%の場合 38万円×10%+33万円×10%=71,000円
・所得税率20%の場合 38万円×20%+33万円×10%=109,000円
・所得税率23%の場合 38万円×23%+33万円×10%=120,400円
・所得税率33%の場合 38万円×33%+33万円×10%=158,400円
・所得税率40%の場合 38万円×40%+33万円×10%=185,000円
・所得税率45%の場合 38万円×45%+33万円×10%=204,000円
年間52,000円~204,000円と幅はありますが、これらの税負担が増加することになります。
なお、所得税の税率は課税所得の範囲で下記のように定められています。
サラリーマンの方の場合の課税所得とは、「給与収入ー給与所得控除ー所得控除」で求められます。
夫婦控除の創設?社会保険の扶養の範囲130万や短時間労働者106万未満の壁はどうなる?
配偶者控除の廃止となれば、上記の様に多かれ少なかれ税負担が増加することになります。
政府税調も、税負担の増加だけでは国民の支持を失いかねないので、配偶者控除に代わる夫婦控除(?)なるものの創設も検討しているようです。
収入や働き方にかかわらず、夫婦であることで控除が受けられるという夫婦控除。
まだ、現段階での詳細は不明ですが、収入に関係なく受けられるのであれば、対象範囲が広がりますので、控除額としては配偶者控除よりも少なくなる可能性が想定されます。
また、所得控除という形だと、高所得者層に有利だという点においては現行の配偶者控除制度と変わりませんので、税額控除など別の形での創設もあるかも知れません。
次に、給与収入103万円の壁とともに意識されている、「社会保険の扶養130万円の壁」、「この10月から施行される短時間労働者に対する社会保険適用による106万円の壁」があることがどのように影響していくか気になります。
奥さんが旦那さんの社会保険の扶養から外れることになると、国民健康保険、国民年金の負担が増え、上記の税金以上の負担増が考えられます。
ましてや、社会保険の被保険者要件が短時間労働者にも拡大されるため、奥さん本人が社会保険の被保険者になることも考えられます。
このように社会保険の絡みもありますので、配偶者控除の廃止によって、本当に女性の社会進出を後押しすることができるのか微妙な気がします。
今後の制度の発表を待ちたいと思います。
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【編集後記】
配偶者控除はまだどうなるか分かりませんが、税制は常にその時の情勢に併せて変わっていくものです。身近な税制は、注目しておきましょう。
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