配当所得には確定申告不要の制度があります。
でも、場合によっては確定申告したほうが有利な場合もあるんです。
配当所得の申告不要、源泉徴収選択口座内配当の特例
配当所得に関しては、あまり確定申告を意識している人は少ないかもしれません。
それは、申告不要制度と源泉徴収選択口座内配当の特例があるからです。
まず、申告不要制度について。
通常、上場株式等については配当の支払いが行われる時点で、
所得税15.315%(復興税を含みます)、住民税(5%)が源泉徴収されます。
この源泉徴収をもって確定申告しなくてもよいのが、申告不要制度です。
また、上場会社等以外の配当についても、申告不要制度があります。
こちらは上場株式等とは異なり、1銘柄の配当額(計算期間1年の場合)毎に、
年間10万円以下の場合のみという制限があります。
ちなみに、源泉徴収は所得税20.42%(復興税を含みます)、
住民税は特別徴収されません。
もう一つが源泉徴収選択口座内配当の特例です。
特定口座で源泉徴収有りを選択しており、
上場株式等の配当を特定口座に受け入れている場合のお話。
特定口座自体が、原則として申告不要です。
株式の譲渡損があれば、配当所得と自動的に損益通算してくれる優れものです。
配当控除を適用できるのは、総合課税を選択した場合のみ
上記の二つの方法以外に、配当所得を普通に確定申告することもできます。
それが総合課税での計算で、給与所得や不動産所得などと一緒に合算して
税額を算出するものです(申告分離課税もありますが、今回は総合課税のお話)。
総合課税を選択した場合のみ、配当控除という税額控除を適用することが可能です。
配当控除とは、基本的に配当所得の10%(※)相当額の所得税、
2.8%(※)相当額の住民税を減額してくれる規定です。
(課税総所得等が1,000万円を超える場合には所得税は5%、住民税は1.4%
又、証券投資信託の分配金等の場合は率が異なり、更に低くなります。)
所得税や住民税が安くなる可能性があるわけですが、問題もあります。
それは、総合課税で計算すると必然的に課税される所得が増えていくことです。
ご存知のとおり所得税は、累進課税制度をとっており、
所得が上がっていくにつれて、税率が上がっていってしまうからです。
配当控除を適用して有利な場合とは?
では、配当控除を利用することで、
どこまでが有利になるのかを想定してみましょう。
上場株式の配当所得10万、源泉2万(所得税1.5万、住民税0.5万、復興税考慮外)。
課税総所得金額は1,000万円以下で、配当控除は10%の適用範囲内。
損益通算(繰越控除)する株式の譲渡損がないという前提です。
課税総所得金額には総合した配当所得も含まれます。
○課税総所得金額195万円以下の場合(所得税率:5%、住民税率:10%)
①所得税 10万×5%-10万×10%(配当控除)-1.5万(源泉分)=△2万円
②住民税 10万×10%-10万×2.8%(配当控除)-0.5万(源泉分)=0.22万円
③①+②=△1.78万円
∴申告不要にしているよりも、総合課税を選択した方が有利です。
○課税総所得金額195万円超330万円以下の場合(所得税率:10%、住民税率:10%)
①所得税 10万×10%-10万×10%(配当控除)-1.5万(源泉分)=△1.5万円
②住民税 10万×10%-10万×2.8%(配当控除)-0.5万(源泉分)=0.22万円
③①+②=△1.28万円
∴これも総合課税を選択した方が有利です。
○課税総所得金額330万円超695万円以下の場合(所得税率:20%、住民税率:10%)
①所得税 10万×20%-10万×10%(配当控除)-1.5万(源泉分)=△0.5万円
②住民税 10万×10%-10万×2.8%(配当控除)-0.5万(源泉分)=0.22万円
③①+②=△0.28万円
∴まだギリギリ総合課税有利ですね。
○課税総所得金額695万円超900万円以下の場合(所得税率:23%、住民税率:10%)
①所得税 10万×23%-10万×10%(配当控除)-1.5万(源泉分)=△0.2万円
②住民税 10万×10%-10万×2.8%(配当控除)-0.5万(源泉分)=0.22万円
③①+②=0.02万円
∴ここで総合課税が不利になりました。
課税総所得金額が695万円が一つの目安となりそうです。
譲渡損がなく、所得制限付きではありますが、
総合課税を選択し配当控除を適用することにより、
所得税、住民税の税負担が軽減することになります。
課税総所得金額695万円以下のイメージですが、
年収1,100万くらいであれば、扶養なしで給与所得控除、社会保険料控除、基礎控除を
差し引いた課税総所得金額が、そのあたりの水準になります。
特定口座などで売買せずに株式を保有しており、
配当だけを受け入れている場合等もありますよね。
そのままだときっちり源泉分は課税されています。
条件に合致して、配当控除の適用が有効な場合には、
総合課税での確定申告で節税してみましょう。
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【編集後記】
この時期は合計表作成に追われる季節です。
今年からはマイナンバーのおかげで、ひと手間もふた手間も取られます。
【昨日の一日一新】
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