平成28年度の確定申告業務真っ只中、
特定口座年化取引報告書で公社債等の存在感を感じずにはおれません(笑)。
(※)国税庁参考資料より
上場株式等の範囲が拡大
平成28年1月1日以後からは、上場株式等の範囲が広がっています。
上場株式や公募株式等証券投資信託の受益権等に加えて、
「特定公社債、公募公社債投資信託の受益権等」も上場株式等に含まれることになりました。
金融所得一体課税の名のもと、平成27年以前まで可能であった
上場株式等と一般株式等との間での損益通算、繰越控除が不可能になっています。
その代わりと言ってはなんですが、上場株式等に含まれることになった、
公社債、公社債投資信託が申告分離課税を選択することが可能となり、
上場株式等の譲渡損失との損益通算、繰越控除が可能になっています。
特定口座年間取引報告書もリニューアル
平成28年の特定口座年間取引報告書、「配当等の額及び源泉徴収税額等」の欄が、
リニューアルされています。
まずは平成27年度のもの。
続いて、平成28年度のもの。
一見するとたいして変わってない感じなんですが、よく見ると
平成28年度より、「特定上場株式等の配当等」と「上記以外のもの」に
区分されています。
この「上記以外のもの」が、いわゆる「特定公社債等、公募公社債投資信託の受益権等」
に該当する、平成28年度から新たに上場株式等の仲間入りになったものです。
トップ画像の通り、平成27年度以前は公社債、公社債投資信託は非課税の取り扱いでした。
しかし、改正により上場している公社債や公募公社債投資信託の受益権等は、
申告分離課税又は申告不要を選択することが可能になりました。
平成28年度の特定口座年間取引報告書において、上場株式等の譲渡損失があれば、
「特定上場株式等の配当等」と同様に「上記以外のもの」の配当等も、
損益通算が自動的に行われているはずです。
ただ、この特定公社債等や公募公社債投資信託の配当等というのは、
いわゆる利子所得に該当します。
上場株式等の配当は配当所得なので、損益通算が可能なのは同じになったわけですが、
絶対的に異なる部分があるのです。
損益通算、繰越控除しながら、配当控除も可能???
配当所得は、ご存知のとおり総合課税か申告分離課税を選択することができます。
一定の金額以下の場合、特定口座の場合は申告不要も選択可能です。
総合課税では配当控除を受けることができます。
配当控除についてはこちらの記事をどうぞ!
一方申告分離課税は、譲渡損失との損益通算、繰越控除が可能です。
ただし、これらは併用することができません。
損益通算、繰越控除を受けながら、配当控除の適用はできませんでした。
これは、改正後の今もこの条件は変わっていません。
ただし、上記の上場株式等の配当等の範囲に利子所得となるものが含まれたため、
イレギュラーな形に見える状況が稀に存在します。
例えば次のような状況の場合です。
・特定口座…譲渡損益はなく、「上記以外のもの」の配当等のみがある
・過年度の上場株式等の繰越損失がある
・特定口座以外に単独の上場株式の配当がある
・合計所得金額からみて、上場株式の配当は総合課税で配当控除を使う方が有利になる
特定口座の「上記以外のもの」の配当等(利子所得)は、確定申告で繰越損失を使うことにより、源泉徴収税額が還付されます。
申告分離課税で繰越損失と損益通算しているので、
単独の上場株式の配当は、総合課税を選択できないように見えます。
しかし、この場合「上記以外のもの」の配当等は利子所得です。
利子所得は申告分離課税を選択していますが、配当所得は何も選択していないわけです。
ですので、単独の上場株式配当は総合課税で配当控除の適用が可能です!
感覚的には、申告分離を選択しているので、総合課税による配当控除は適用不可だと
頭の回路が働きますが、利子所得のみで申告分離課税を選択した場合は例外がありえます。
上記の場合、特定口座に「特定上場株式等の配当等」がある時は、
配当所得が申告分離課税を選択することになります。
この場合には、単独の上場株式は総合課税を選択することはできません。
公社債関係の取り扱いの変更、
さりげないところで微妙な変化をもたらしています。
利子所得と配当所得の絡み、金融所得一体課税の複雑さを肌で感じている
今年の確定申告です。
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【編集後記】
なんか、「もうちょっと単純にならんもんかなぁ。。。」
と思っちゃいますね。
まあ、しばらくすると慣れてくるんでしょうけどね(苦笑)。
【昨日の一日一新】
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