経営者にとって、利益が出ているかどうかというのは気になる点ですよね。
毎月の損益計算書で確認する利益、ちゃんと棚卸を考慮していますか?
普段目にするのは、棚卸(在庫)が加味されていない試算表
経営者であれば、毎月の業績を確認していることでしょう。
自計化で自ら作成、もしくは会計事務所が作成してくれる試算表でチェックしてますよね。
中小企業が作成する試算表、たいていは棚卸(在庫)の数字は入っていません。
毎月在庫をカウントすることは、零細中小企業には負担ですので当然です。
しかしながら、在庫を無視して試算表を見ると、実際の姿が把握できないことになります。
サンプルの月次損益計算書を使って、確認してみましょう。
なお、小売業で原価率が80%(粗利率が20%)、4月の期首の在庫は50万の設定とします。
まず、「売上高」ですが各月とも240万と同じです。
また、「販売管理費合計」も各月とも48万で同じです。
異なるのは、毎月の仕入高です。それぞれ170万、180万、200万、220万と推移しています。
自動的に、粗利(売上総利益)の金額もそれぞれ、70万、60万、40万、20万となります。
本業の儲けを確認する営業利益も22万、12万、▲8万、▲28万となります。
この数字を確認して、「4月は利益が出てるなぁ」とか「6月、7月は赤字でしんどいよ」と認識するのは、本来の損益を把握していることにはならないのです。
原因は棚卸を考慮していないためです。適正な売上原価が算出されていません。
売上原価、ちゃんと把握してますか?
売上原価、簿記をかじったことがあれば「仕入/繰商・繰商/仕入」という仕訳のフレーズに聞き覚えがある方もおられるでしょう。でも、理解した気になっているつもりで、実はあやふやだという方も多いのではないでしょうか?
売上原価とは、その名のとおり”売り上げたもの”の仕入れの価格のことをいいます。
100で売り上げたものを、80で仕入れていたら原価率は80%、70で仕入れていたら原価率は70%になります。
では、4月の商品の動きを原価BOXで見てみましょう。
4月には170万を仕入れましたが、これは売上原価ではありません。
なぜなら、実際に売れたのは、月初に残っていた50万と4月に仕入れた170万の合計220万のうち、月末に在庫として残っていた28万を除いた、192万が売れたことになるからです。
<4月の売上原価>
50万+170万ー28万=192万
192万で買ったものを240万で売り、月末時点では28万のまだ売れていない在庫が残っているというのが、本来の4月の姿になります。
棚卸(在庫)を加味して、本来の利益を確認しよう
では、上記の月次損益計算書に、棚卸(在庫)を加味してみると次の様になります。
(期首商品棚卸高の期首は”月初”と、期末商品棚卸高の期末は”月末”と考えてください。)
毎月の売上原価は192万と各月同じ数値になりました。
当然です。毎月の売上が240万と同額ですので、原価率80%の商品が売れたということは、売上原価も同額になるわけです。
結果、粗利(売上総利益)も48万になり、各月の営業利益は0ということになります。
本来の正しい姿は、商品を販売した利益(粗利)で、固定費(販管費合計)をまかなえているけれども、利益は出ていないということになるわけです。
利益をチェックする上で、営業利益、経常利益など重要なのは言うまでもありませんが、それらの基になる粗利益(売上総利益)の把握は、やはりとても重要です。
毎月在庫の集計をきっちりできないまでも、ある程度の把握をし考慮することで、チェックする試算表の数値が生きたものになってきます。
出来上がった試算表の数値を鵜呑みにしないように注意しましょう!!
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【編集後記】
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